”究極のピーラー” エバーピーラー開発秘話インタビュー

「エバーピーラー」との出会い

左ききの道具店では、必ずしも左利き専用品にこだわらず、あくまで「左利きの方に(も)使いやすく優れたアイテム」という点を重視して商品のセレクトをしています。それゆえ、アイテムによっては敢えて左きき用ではなく左右兼用のものをセレクトしている場合もあります。

そんな中、店長が偶然見つけて試しに購入してみた「エバーピーラー」の左利き用。左右対象の形状のピーラーも数多くある中、敢えて左右を選ぶ「斜め型」のフォルムです。(当店では扱いがありませんが、もちろん右利き用もあります)

これまで使っていた左右対称のT型ピーラーに不満があったわけではないのですが、さて使い心地はどうだろうか・・と自宅で使ってみたところ、その切れ味の良さに感動。本当に軽い力で剥けたので、本当に皮が剥けているのか触って確認してしまったほどです。

また、ピーラーには珍しい『替刃』があるということにも好感を抱きました。「これはぜひ左利き用を取り扱いさせてもらいたい!」と思い、さっそくメーカーである飯田屋さんに連絡をしました。

飯田屋さんは、料理道具の聖地と言われる東京・かっぱ橋道具街で、大正元年から続く料理道具専門店。今回、6代目社長・飯田結太さん(写真)に「エバーピーラー」の開発秘話をお聞かせいただきました。

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-どんな経緯で、エバーピーラーを作ることになったんでしょうか?

飯田さん
「飯田屋の店頭には、ピーラーをお求めの方がたくさんいらっしゃいます。特に、ご高齢でだんだん握力が弱くなったり、手指の疾患で思う通りに力が入らないという方には、ピーラーはとても重要な道具なんです。

ある時『飯田さん、とにかく一番切れるピーラーをちょうだい』というお客様がいらっしゃいました。飯田屋で扱う100種類以上のピーラーの中からご提案してお買い上げいただいたのですが、それでもまだご満足いただけなかった。それなら『世界一切れるピーラー』を自分たちで作ろう!ということで開発に至りました。

まず『世界一切れるピーラーとはどんなものか?』ということを考え抜きました。そして”軽い力で皮が剥ける” ”切れ味が長く続く”の2点である、という結論にたどり着き、このエバーピーラーが完成しました。」

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-開発にあたって、大変だったことや苦労されたことはありますか?

「作ると言っても私たちが工場を持っているわけでは無いので、企画を持っていろいろなメーカーを訪ねました。コンセプトに共感して、一緒に試作しながら作ってくれる、そんなパートナーを探していたんです。

でも、なかなかうんと言ってくれるメーカーはいませんでした。たくさんの会社に断られ続けあきらめかけていたとき、たった1社だけ『面白そうですね、やりましょう』と言ってくれたのが、サンクラフトさん※だったんです。
(※サンクラフトは、岐阜県関市にあるキッチン用品のメーカー。左利き用アイテムも多く製造しています)

サンクラフトさんは、作り手の皆さんがとても熱心で、技術力が高いという印象です。例えば、エバーピーラーでは鋭い切れ味を長持ちさせるため、主に業務用や専門道具で使われる『440A』という特殊なステンレスを採用しています。なぜ普通のピーラーに使われないかというと、硬くて成型が難しいから。サンクラフトさんの高い技術力があったからこそ、実現することができました。」

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「難しかったのは、切れ味の評価ですね。今の技術では、ピーラーの切れ味を数値化する方法が無いんです。包丁にはあるんですけどね。どうしようか・・と悩みながらニンジンの皮を剥いていたところ、サンプルごとに皮を剥く時の『音』が少し異なることに気がつきました。切れ味が良いときほど音がわずかに小さくなるのです。そこで、皮を剥く音の大きさをdB単位で計測することで、切れ味を評価することに成功しました。

そして完成した製品では、開発当初に目標としていた『小指一本で引っ張っても皮が剥ける』を実現することができました。もしエバーピーラーをお買い上げになったら、ぜひ試してみてください。そして、抜群の切れ味の証拠として、皮を剥いた切り口の美しさを確認してみてください。きっと断面が光って見えるはずです。」

-ピーラーの中でも珍しい形をしていますね。なぜこの形になったのでしょうか?

「まず、形を最適化するため、あらゆるピーラーの形(T型・I型・斜め型)を検証しました。そして、刃の角度を1度ずつ変えたサンプル品を作ってもらい、どの角度が最も使いやすいか評価を行った結果、この独特な斜め型に行き着きました。

それから、店頭でたくさんのお客様と接する中で、ピーラーを皮むきだけでなくキャベツの千切りに使うというお客様も数多くいらっしゃることがわかっていたので、扱いづらくならないギリギリのところまで幅を広げました。実はこれにより、特殊な砥石が必要になり、その砥石の開発まで行ったんですよ。」

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-「左利き用」を作ったのは、やはりリクエストがあったからでしょうか?

いいえ、左利き用モデルについては初めから作る前提で開発を進めていました。後で要望があって作ったという訳ではありません。

というのも、もともと飯田屋の店頭の一角に左利き用のキッチン用品を集めたコーナーがあるんです。中には、その売り場で感動のあまり涙する左利きのお客様に出会うこともあり、右利きの私にとっては衝撃でした。以来『全ての料理する人に感動してもらえる道具をお届けする』という思いでこの店をやっています。」

-そうでしたか!私もいつかぜひ飯田屋さんのお店にお邪魔してみたいです。
そして「替刃」があるというのは嬉しいポイントですね。

「替刃があるピーラーというのはかなり珍しいと思います。私としても、最初から替刃をラインナップしていることが自慢だったりもします。
よく切れる刃はもちろんですが、本体も軽さ・握りやすさと丈夫さを絶妙なバランスで調整して作りあげたもの。せっかくなので長く使って欲しいという思いからです。」

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-普段のお手入れや取り扱いについて教えてください。

「保管については、S字フックなどで吊るし、他のものとエバーピーラーの刃がぶつからないようにすると切れ味が長持ちします。ピーラーの切れ味が落ちる主な原因は、洗う時に刃がお皿などにぶつかったり、引き出しの中で他の道具とぶつかったりして刃が欠けることです。それを避けることで、最も長く気持ちの良い切れ味を持続させることができます。

刃の交換の目安は、使用頻度や保管方法によって一概には言えませんが、気持ちよい切れ味が損なわれてきたら交換時期と考えてください。先に申し上げた通り、一般的なピーラーより長く切れ味を保てるよう硬い素材を使用しているので、丁寧に扱えば10年もつという方もいらっしゃるかもしれません。」

さいごに

1時間ほどディスプレイ越しにお話を伺った中でも、飯田さんの料理道具への愛が力強く伝わってきました。世界中の料理道具を取り扱ってきた飯田屋さんだからこそできた「究極のピーラー」、この切れ味をお試しいただけたら嬉しく思います。

↓ 納品時の段ボールにも素敵な直筆メッセージをいただきました

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写真提供(2,5枚目):飯田屋