左利きの手で、編み物を楽しもう!作家・佐野純子さんインタビュー

「こんな編み物本がほしかった!」と左ききの道具店でも大好評の『左利きさんのためのはじめてのかぎ針編み』『左利きさんのためのはじめての棒針編み』。著者で左利きの作家・佐野純子さんに、左利きと編み物についてお話を伺いました。
ー左利き向けの編み物本が大変好評ですが、どのような経緯で出版されることになったのでしょうか。
2000年頃からニット作家仲間で「ハオ」というミニコミ誌を作って活動しています。
その編集長のところに、出版社から「左利きの編み物本を作りたい」というオファーがあり、左利きである私にお話をいただいたのがきっかけです。
この本の担当編集さんも左利きの方なんですが、とても熱意のある方で、最初お話しした時には正直「いつか実現したらいいな〜」くらいに思っていたのですが、その後すぐに企画が通ったという連絡があり驚きました。
私自身はじめての単著だったので、編集さんも一緒に手探りで作り上げたという感じです。予想以上に多くの左利きの方から反響があり、とても嬉しく思っています。
▼最初に出版された『左利きさんのためのはじめてのかぎ針編み』

ー佐野さんご自身が編み物を習得される中で苦労されたこと、工夫されたことなどがありましたら教えてください。
編み物を始めたのは8歳か9歳くらいの時です。母が編み物をしていたので、幼い頃から興味を持っていました。
母は右利きでしたが、私は矯正されることはなかったので、おそらく向かい合わせで習うなどしていたと思います。
小学生だったので、左利き以前に編み物をすること自体がまだまだ難しくて、少し習っては投げ出すというのを繰り返していました。それでもやはり好きで、独学でコツコツと続けていたんです。
30歳すぎたころに、思い立って編み物教室に通い始め、そこで本格的に学び現在に至っています。

ー道具や材料、作業について、初めての方が気をつけると良いことはありますか。また、左利きの方が特に気をつけると良いことがもしあれば教えてください。
編み針は、本当に最初のお試しなら100均のものでも良いと思います。ただ、やっぱり編みやすさは全然違うので、続けられそうならちゃんとしたものを使うのが断然おすすめです。
そして、号数(太さ)の違う編み針をバラバラで買っていると、どれを持っていたかわからなくなったり、結局割高になることも多いです。だったら思い切って最初からセットで買うのも良いと思います。編み針は一生使えるので、長い目で見たらそれが一番お得かもしれません。
毛糸については、とにかく高ければ良いというものでもないので、手頃なものから始めてみるのが良いのではと思います。最初は特に、編めば編むほど上達につながるので、たくさんチャレンジしてみてください。
左利きの方へのアドバイスは、やはり「ハサミ」のこと。
特に今の大人世代の方だと、左手で右手用ハサミを使っている方も多いと思いますが、それで毛糸をきれいに切るのは難しいし余計な手間がかかります。左手で使うならぜひ左手用ハサミを使ってください。
▼佐野さんの作品

ー「ほとんどの先生や教本は右利きなんだから、左利きでも右でかぎ針を持って慣れてしまった方がいい」という意見もありますが、いかがですか。
その方によっていろいろな考えがあるとは思いますが、私は利き手でかぎ針を持って始めた方が良いように思います。
というのも、最初はいいかもしれませんが、上達していったときや棒針にステップアップしたときに、細かな作業のしやすさが違ってくるからです。楽器やスポーツなどにも通ずるところがあるかもしれませんね。
編み図を頭の中で反転させるのが難しければ、プリンタやコピー機の「反転コピー」機能を利用して簡単に左利き用にできますし、上手くなってくれば編み図を使わずに作業することができます。
左利きの方は、せっかくなのでぜひ左でチャレンジしてみてほしいと思います。
▼佐野さんの作品

ー調べると「毛糸の撚り(より)は右利き向け」「左で編むと編み地がかたくなる」という説明を見かけますが、実際のところはどうなのでしょうか。
※撚り=糸のねじってある方向のこと
確かに多くの市販の毛糸はS撚りで、右利きの方が編むことを想定して作られているかもしれません。
ですが、実際の編み物の仕上がりには「編む手の力加減」「毛糸玉の糸を中から取るか外から取るか」など、それ以外の条件も大きく影響してきます。
毛糸の撚り方向は、あくまで多くの要素のうちの一つでしかないので、あまり気にする必要はないように思います。
ーこれから編み物にチャレンジする左利きの方へ、アドバイスやメッセージがありましたらお願いします。
編み物を始めるのって、最初の一歩が難しいものだと思います。でもそれはたぶん、右利きの方であっても同じで、誰でもはじめはなかなかうまくいかないもの。
左利きであることも自分のスタイルのひとつとして、楽しみながらチャレンジしてみてください。編み物の世界を、自分らしく楽しんでほしいです。
<商品ページ>
・書籍『左利きさんのためのはじめてのかぎ針編み』
・書籍『左利きさんのためのはじめての棒針編み』
・左ききのかぎ針編みギフトセットA(ハサミあり)
・左ききのかぎ針編みギフトセットB(ハサミあり)

佐野純子さん プロフィール
人形作家。左利き。右利きの母から初めて編み物を習う。きゆなはれる氏主宰「夢民舎」にてののづくりを、同ニットクラスにて細野雅子氏から編み物を学ぶ。
ニットを中心とした新進クラフト作家の誌上ギャラリーをコンセプトとするミニコミ誌[hao]のメンバーとして活動している。文部省認定毛糸編物技能検定1級。
Information
佐野さんが参加する[hao]の作品展が開催されます。
ハオ展2025「ねこ編み物語」
2025年12月4日(木)〜8日(月)
東京・吉祥寺 ギャラリー永谷







